氷川神社 森の葉ベンチ

2011年、私が川越に引っ越してきた年、川越氷川神社の御神木のケヤキが台風で中ほどから折れてお倒れになってしまいました。しかし、本殿を見事に避けるかたちで御神木はお倒れになり、その神意に見合った形でこの御神木を活かすことはできないかと関係者の皆さんが思案されておられました。私もたまたまご縁をいただいて話し合いの輪に入らせていただきましたが、当時の私は良案を思いつくことができませんでした。

それから12年経った2023年、氷川の杜(もり)プロジェクトが始まり、コロナ禍を乗り越えて、氷川会館が建て替えられました。以前の境内を圧迫していた巨大な鉄筋コンクリート造の洋風建築から神社らしい低層の木造の会館となり、森と空が広がる境内になりました。境内には光が溢れ、窮屈そうであった御神木も大鳥居も空に向かって晴れ晴れとした姿を見ることができるようになりました。

全国や海外からもたくさんの参拝者をお迎えするようになったご縁を繋ぐ神様を祀る川越氷川神社。山田宮司から参拝者のためのベンチをデザインして欲しいとご依頼いただいたその時、当時は思い付かなかった風景が目に浮かびました。お倒れになった御神木が葉っぱの形に姿を変え、参拝者の皆さんがそこで休まれている風景を。

「森の葉ベンチ」は折りたたむことができる二人がけのベンチです。
倒れた御神木は傷や腐りもあって一枚板で使える部分は少なかったのですが、座面を葉の葉脈のように斜めに継ぎ接ぐことで楕円形の大きな木の葉のような座面を作ることができました。

大鳥居の前の参道に、森の葉が舞うように並べられた腰掛け。様々なご縁がこの森の葉の上で繋がってゆくのでしょう。私自身も御神木のお陰で川越の地にご縁をいただくことができました。
参拝者にひとときの安らぎをお与えになり、幾年(いくとせ)か経ったの後に森の葉が朽ちた際は、氷川の杜の土に御還りになっていただきたいと願っています。

サイズ
組み立て時 W1200×D400×H396
折りたたみ時 W1200×D400×H66

photo 小松正樹

氷川神社
2023.10

旅香合 携帯木製アロマディフューザー

木彫の町「井波」。木彫の材料であるクスの木の清涼な香りを嗅ぐと井波の風景がありありと思い出されます。その彫刻の後にでる「こっぱ(削りかす)」からオイルを抽出してルームアロマを作りました。井波の仲間たちと色々考えながら作り上げた、旅と香りをテーマにしたブランド「CANO かの」です。
この木彫の香りを持ち運べる携帯ディフューザー『旅香合』をデザインしました。

『旅香合』は旅をしながら土地の香りを持ち運ぶために開発された木製アロマディフューザーです
木工職人と木彫刻家によって作られた香合型ディフューザーのふたを開けると、精油の小瓶と、好きな場所に掛けて香りが楽しめる香玉が入っています。手触りが心地よい旅香合は、いつもそばに置きたくなるアイテムです。

・そのままディフューザーとしてお使いいただいたり、香玉を窓際やドアなど風が通るところに掛けて、香りの広がりをお楽しみください。

・持ち運ぶ時は、土台のくぼみに、乾いた香玉と小瓶を戻してふたを閉め、旅香合に紐を巻きつけます。エッセンシャルオイルのふたはしっかり閉めて収納してください。

旅香合
内容物
香玉(紐付き)、エッセンシャルオイル小瓶(CANO/I木彫り)、ミニ風呂敷

Size: W76 x D46 x H46 mm
Material: 欅

エッセンシャルオイル
Size: Φ20 x H38 mm
Quantity: 3ml
Ingredient:クスノキ天然エッセンシャルオイル

「CANO かの」
https://cano-caori.com

プロデュース
CORARE ARTISANS JAPAN
https://corare.net/portfolio/cano

クリエイティブディレクション
山川智嗣、山川さつき

プロジェクトマネジメント
中臺雅子

プロダクトデザイン
大治将典

グラフィックデザイン
久保美穂

制作協力
四十沢木材工芸(四十沢宏治)
トモル工房(田中孝明)

コピー制作
アナタノコトバ(タダカツ)

写真
大木賢写真事務所(大木賢)

2022.06

MINKA Birdhouse

「MINKA」はトロントのショップ「Mjolk」が運営するブランド。私はMINKAのバードハウスをデザインしました。このバードハウスは銅のスピニングで出来ている。トロント製です。私の庭にこのバードハウスを設置しました。

MINKA is a brand produced by Mjölk, an interior shop in Toronto, Canada.  I designed the Birdhouse for MINKA.  This birdhouse is made of copper using the spinning technique. It is made in Toronto.  I installed this birdhouse in my garden.

Size
w234(Roof)
w180(Body)
h278(Roof+Body)

Maker/Mjolk
2022.06

OGAMIDO 宮大工が手掛けた木曽ひのきの厨子

現代の日本の住空間に寄り添うよう作られた小さな仏壇(厨子 ずし)です
飾り棚や本棚などにも設置しやすいサイズ感と素材、そして自然や神仏に対する感謝・畏怖の念が湧き上がるような風格を追求しました。試行錯誤を繰り返し、完成した「OGAMIDO」は、現代のライフスタイルや住空間と美しく調和しながらも、独特の存在感を放つたたずまい。屋根のタイプが異なる3種類から、インテリアやお好みに合わせてお選びいただけるようにデザインしました。

厨子のボリュームをどうするか?深く検討しました。今の日本の住まいには仏間はほぼなくなり、仏壇や厨子を置くためのスペースはとても限られています。そこで飾り棚や本棚などに厨子を設置した際にも違和感なく配置できるようなサイズと、厨子としても機能、仏壇が持つ畏怖のような敬う気持ちがなくならないボリューム感を検討しました。設置スペースとご自宅のインテリアの相性や家主の好みに対応できるよう、屋根ナシと屋根2種をご用意しました。

扉を両手で開け閉めする「拝み戸(おがみど)」という扉の仕組みがもっとも引き立つようにデザインしました。金物の使用する部分を極力抑え、カンヌキも本物の寺社と同じように木製にしました。カンヌキがかかる金物が引き手も兼ねるデザインになっています。

全体の構造は神仏具を作ってきた宮大工の技が際立つ木地仕上げです。木曽ひのきの美しい木目を生かした一枚板の屋根と、伝統的な仏壇の扉にならい両手で開閉する前開き式の扉「拝み戸」。どちらも仏壇本来のつくりを大切に継承したものです。

宮大工が作った無垢の木曽ひのきの厨子はサンドペーパーなどを使わないカンナなどの刃物だけで仕上がっていて、表面は驚くほど滑らかです。そっと厨子に触れてみてください。何百年と生きてきた貴重な木曽桧への感謝と宮大工の技への尊敬する気持ちが、ご先祖様への敬う気持ちと重なると思います。

OGAMIDO 寄棟(よせむね)屋根
寺社建築にならった、四方へ勾配を持つ屋根が特徴。モダンでありながら、仏壇本来の堂々とした風格が漂います。

サイズ:高さ:354×幅:336×奥行き:201mm
素材:木曽ひのき

OGAMIDO 丸屋根
木曽ひのきの美しい木目や質感が際立つやわらかな印象のフォルム。洋間のリビングや寝室など、どんな部屋にもなじみます。

サイズ:高さ:333×幅:306×奥行き:195mm
素材:木曽ひのき

OGAMIDO 屋根なし
屋根がなく、OGAMIDO3種の中で最もコンパクトなサイズ。本棚など、限られたスペースにもすっきりと収まります。

サイズ:高さ:300×幅:258×奥行き:156mm
素材:木曽ひのき

メーカー/Woodpecker
https://www.hello-woodpecker.com/ogamido/
製造/唐箕屋(とうみや)本店

2021.12

「直会殿ベンチ」

川越氷川神社直会殿の広場のベンチをデザインさせていただきました。
旧氷川会館が無くなって空が広がりそこに生まれた森が既存の森と背が並んで森に還っていく様を見ていけるようにハイバックのベンチを作りました。また、戦没者慰霊塔も広場のお陰で清々しい空間になりました。慰霊塔と桜が見える位置にもベンチを設置しています。
ずっと散歩が楽しい川越の町に優しいベンチが作りたいと思っていたので感無量です。川越氷川神社山田宮司のお取り計らいに感謝いたします。

製作
木部/田嶋木工所
金物/サボア savor
2021.4

「直会殿ブラケットランプ」

川越氷川神社 直会殿の入り口のブラケットランプをデザインさせていただきました。
直会に欠かせない御神酒を入れる瓶子をイメージするようなランプシェードの形状にデザインしました。
ランプ正面に川越氷川神社の菱雲が透かし彫りで彫り込んであります。

ランプシェード/JICON 磁今
金物/サボア savor
2021.4

 

「陽は沈む。また朝が来るまで。」





御蔵島にあるツゲとクワの木材を使ったアートプロジェクトの一貫として制作させていたいだきました。

御蔵島の山に登り、桑の木を見てきました。樹齢を経た大きな桑の木は山にほとんど残っていません。御蔵島のツゲの木は植林されていますが桑の木は植林することができないそうです。そして島の木材出荷場では行き場を見出せていない桑の一枚板たちをたくさん見ました。
この材をただ消費するようなものを作ってはいけないと思いました。いつか何百年か後、また御蔵島に桑の木が茂り大きくなるまで、今残っているこの貴重な材は島に直接来て一枚一枚木と話すように選んで責任を分かち合える人だけに手渡したらいい。木は材木になっても何百年も残せます。2021年の御蔵島の海・山・桑の木の現状を象徴するものを作ろうと思いました。
御蔵島は陽が海に沈みます。海に沈む赤い太陽の様に陽が欠けたような板をつくりました。欠けているように見えるところは木の表皮の部分です。
遠目では、日の沈む太陽に見え、近寄ると、欠けてしまった不完全な板に見え、間近で見れば、欠けたのではなく力強い表皮だとわかり、複雑でキラキラひかる木目から何百年の年月を経た分厚い桑の一枚板から切り出され連なって作られた三枚の板だとわかります。

Large size = 330×291×t24
Medium size = 330×198×t24
Small size = 315×123×t24

 

御蔵島の
宝物
黄楊と桑

東京都には、11の有人離島があります。『d design travel』の一環で、東京にある離島の観光とものづくりを、ロングライフデザインの視点で取材しました。11ある島のひとつ、御蔵島には、長い歴史の中で、島に暮らす人々が守り続けた豊かな森があり、樹木は島の大切な産業とされています。中でも、御蔵島の黄楊と桑は目が詰まっていて硬く、粘りがあり、緻密な細工に適した最高級素材として扱われてきた特別な存在でした。
将棋の駒や櫛、判子の材料として重宝されている黄楊、江戸指物の高級材として多くの職人に使われた桑。
それらを今の時代のクリエイションに重ねたら、新たな魅力と側面を発見できないかと考え、プロダクトデザイナーの大治将典さん、木工作家の田中孝明さんと御蔵島を訪れました。
島の人々が「神山」と呼ぶ森の中を歩き、何百年もかけて生長する樹木に触れ、材を選び、そこから感じたことを、
それぞれ作品に表現していただきました。
育つのに100年かかる材を使うなら、100年残るものづくりを。
木目に刻まれた御蔵島の歴史と自然環境、そこに暮らす人々の営みを感じていただけたら幸いです。

2021. 3. 25 ‒ 3 . 29
主催:D&DEPARTMENT PROJECT 協力:凸版印刷株式会社(東京宝島事業事務局)



IMPLEMENTS STANDARD PLATE


端正さの中に気遣いのある皿。

キリッとした端正な佇まいの中に、使いやすい気遣いが施されているプレート皿です。
フラットで広い見込みは、ナイフ・フォークが使いやすく、また盛り付けしやすい形状です。
パリッと張りのある形で作られた縁は、ディナープレートとして使うときは華やかに、
取り分け料理を盛りつけるときは料理が溢れにくい、使い回ししやすいプレートです。
グルっと刻まれた見込みのラインは、盛り付けた料理が映え、
カトラリーで料理がすくいやすい「返し」としても機能します。
釉薬はどこか懐かしさを感じるようなマットな白とブルーグレー。
一つ一つ手で掛けられ釉薬は程よいムラ感があり、工業製品にはない味わいがあります。
ブルーグレーの釉薬はIMPLEMENTSの家具に使われているウォールナットに合うように調合しました。

S Φ200 H28 mm
M Φ230 H31 mm
L Φ260 H35 mm

撮影
尾鷲陽介 Yosuke Owashi

ブランド/IMPLEMENTS
製造/JICON 磁今
2018.9

mjolk Diamond pendant with pulley

トロントのショップmjolkのためにデザインしたペンダントランプです。
このペンダントランプはトロントのアイデンティティを私なりに解釈してデザインしました。
トロントのアイデンティティは世界に平和を感じさせることができると思います。
トロントに来て、彼らのお店でも感じるのですが、多様性を絶妙なバランスとセンスでシンプルに編集するのがとても上手だなと思いました。
多様な人種が暮らすトロントで、お互いを思いやりながらピースに暮らしているトロントニアンを思い浮かべながらデザインしました。
このペンダントランプは異素材と異なった形状がバランスして成り立つように出来ています。
菱形のガラスのペンダントランプは相似形の真鍮のバランサーが付いていて、 照明の高さを調整することができます。LEDランプを使用しガラス部分は熱くなりませんので、ガラスのシェードをそっと持って、お好きな高さに合わせて使ってください。
mjolkがピースなアイテムを世界に届けるファクトリーに育つことを夢見ています。

mjolk
Handcrafted in Toronto.
2016

mjolk Brass pepper mill

mjolkオリジナルの砂型鋳物で作った真鍮のペッパーミルです。
日本の真鍮鋳物の生活用品メーカーFUTAGAMIが製造いたしました。
真鍮鋳肌を活かして表面は切削やメッキや塗装をしていないので、徐々に深い色合いに経年変化し、風景に馴染んでいきます。
多角形のしのぎ形状でできたハンドルとボディは手に馴染み、また置いてある風景でも存在感を感じる形状です。
内部を旋盤加工で限界まで薄く削り出していますので、手にしたときに重たく感じない適度な重量になっています。

クライアント/mjolk
製造/FUTAGAMI
2020